ヨーロッパの歴史風景 近代・現代編




西暦 1830年、イギリスでビール税が大幅に軽減され、パブの数が急増した。


イギリスにおいてジンが社会問題を引き起こした

イギリスのジン「ビーフィーター」 西暦1606年にビール税が導入され、更にジンの税金が軽減されたこともあり、伝統的にはビール好きだったイギリスの人々はジンをガブ飲みするようになったらしい。(右の画像は、イギリスのジン「ビーフィーター」のボトル。余談ながら、このボトルに描かれているビーフィーターとは、テムズ川のほとりのロンドン塔の衛兵ヨーマン・ウォーダーズのこと。)

ところが、ジン無しにはいられなくなった人々が犯罪に走るなどの事態となり、それがイギリスの社会問題にもなったんだそうな。

そこで西暦1751年にはジンなどの蒸留酒の税金が大幅に引き上げられた。しかも、ジンの販売にも制限が設けられたんだ。

ところが、人々はやっぱりジンをやめられない。例えば、西暦1780年にはカトリックに対する暴動が起きて教会などが破壊されたんだけど、ついでとばかりに人々はジンの蒸留所を襲ったらしい。もちろん、ジンを飲みまくるためだった。

ビールの反撃とイギリスにおけるパブの増加

そして西暦1830年、ビール・ハウス法が制定された。この法律によって、ビールの税金は大幅に軽減され、しかもビールの販売も自由化されたんだそうな。

イギリスの首都ロンドン近郊の街セント・オバンスのパブの外観 もちろん、その結果としてパブの数は増加し、ビールの消費量も増えたんだ。但し、ジンの消費量は減らず、イギリスの人々の飲酒量は増えてしまったという話もあるけど。

右の画像はイギリスの首都ロンドンの北にあるセント・オバンスという街のパブ。(このセント・オバンスにはワッフルの美味しい店がある。ビールには関係ないけど・・・。)

今度はパブが増えすぎた

ところが、そのビール・ハウス法の制定後、パブを中心とする飲み屋の数が急増してしまったんだそうな。そこで西暦1869年にはビールの取引・流通に制限を加えたらしい。

その結果、中小のパブ(あるいはエール・ハウス)は淘汰され、パブ業界の大資本化が進み始めたとの説もある。

イギリスの首都ロンドンのパブ「シティ・オブ・ヨーク」

ちなみに、上の画像は、ロンドンの中心部にあるパブ「シティ・オブ・ヨーク」。グレイズ・インという法律学校の近くにあるということもあって、弁護士など法律家がここで飲んでいるらしいよ。昔はこの建物は弁護士達のオフィスだったらしい。ついでながら、上のパブの近くには、美味しいフィッシュ・アンド・チップスの店がある。

そして今もイギリスのパブ

そして今もイギリスの人々はパブが大好き。エール、ビター、ラガー、ギネスなど、好みに応じてパブでビールを飲んでいる。(念のために書いておくけど、パブにはワインやスコッチ、コーヒーなどもある。ついでながら、私の大好きなイングリッシュ・ブレックファストなどの食べ物も。)

私はそんなイギリスのパブが大好きだった。ロンドンから日本へ出張へ行くとき、あるいはヨーロッパへ旅行に行くとき、しばらくはパブで飲めないと思うと寂しかったもんだ。だから、飛行機に乗る前には必ず空港のパブでビールを一杯。(下の画像はヒースロー空港のパブ。)

イギリスの玄関口ヒースロー空港のパブ

貴方もイギリスへ行ったら、パブでビールを飲みつつ、イギリスの歴史を考えてみてね。外を歩き、建物や英雄の銅像などを見るだけでイギリスの歴史を考えるのは、片手落ちというものだから。

そんなイギリスのパブなんだけど、西暦2014年12月に眼にした報道によれば、この数年で1万軒ものパブが閉店したとか。リーマン・ショック以後は外飲みが減って家で飲む人が増えたこと、更にはそもそもアルコールの消費量が減っていることなどが背景にあるらしい。

加えて、イギリスのパブの建物の中が禁煙になったのが大きいらしい。イギリス人にも愛煙家が多いし、パブでタバコが吸えないのならば、家で飲むことにしようとなっちゃったのかな。いずれにせよ、パブにはイギリスの歴史と世相が凝縮されているのかも。

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