ヨーロッパの歴史風景 中世編




西暦832年、イタリアの水の都ヴェネツィアにおいて、サン・マルコ寺院(大聖堂)が聖別された。


有翼のライオンはサン・マルコ(聖マルコ)のシンボル

イタリアの水の都ヴェネツィアを歩いたならば、有翼のライオンを見たことがあるんじゃないかな。下の画像の左の円柱の上に見えるのが、その有翼のライオンの像だね。

イタリアの水の都ヴェネツィアにある有翼のライオンはサン・マルコ(聖マルコ)のシンボル

有翼のライオンはサン・マルコ(聖マルコ)のシンボルなんだ。エルサレムの裕福な家に生まれたサン・マルコは、キリスト教に改宗し、聖パウロの側近として伝道活動を行ったらしい。そして新約聖書の中にある「マルコによる福音書」を書いたと言われている。(ちなみに、新約聖書の冒頭には「マタイによる福音書」があるんだけど、その基礎資料とされたのが「マルコによる福音書」だったとされている。)

そして西暦828年頃、エジプトに滞在していたヴェネツィアの商人たちが、アレクサンドリアでサン・マルコの遺骨を手に入れ、ヴェネツィアに持ち帰った。以後、サン・マルコはヴェネツィアの守護聖人となり、そのシンボルである有翼のライオンは国旗にも描かれるようになったんだそうな。(ついでながら、上の画像の右側の円柱の上に立っているのは聖テオドーロなんだけど、彼もヴェネツィアの守護聖人なんだそうな。)

ヴェネツィアに建立されたサン・マルコ寺院

エジプトから持ち帰られたサン・マルコの遺骨は、当初はヴェネツィアの総督(ドージェ)の宮殿(ドゥカーレ宮殿)の付属礼拝堂に安置されていた。その後、サン・マルコの為の新しい寺院が建立された。それが西暦832年に聖別されたサン・マルコ寺院だった。

イタリアの水の都ヴェネツィアのサン・マルコ広場とサン・マルコ寺院(大聖堂)

上の画像の右側に見えているのが、現在のサン・マルコ寺院だね。ちなみに、その前に広がっているのはサン・マルコ広場。ヴェネツィアでしばしば起こる洪水の為に海水が溢れて水浸しになっているけどね。

ビザンティン様式のサン・マルコ寺院

西暦832年に聖別されたサン・マルコ寺院は、10世紀の後半にヴェネツィアに起きた暴動の際に焼け落ちてしまった。その後、再建されたんだけど、11世紀に取り壊され、現在のサン・マルコ寺院は西暦1063年から再建された建物なんだそうな。

イタリアの水の都ヴェネツィアのサン・マルコ寺院(大聖堂)の丸屋根

そんなサン・マルコ寺院は、ビザンティン様式の建物なんだそうな。その特徴を最もよく示しているのが、上の画像に見える丸屋根かな。(上の画像はヴェネツィアにあるホテル・ダニエリの最上階のテラスから海に昇る朝陽を眺めた際に撮影したもの。)

但し、11世紀末に完成した後も、サン・マルコ寺院は何度も改修工事が施されている。特に14世紀から16世紀にかけてゴシック様式に改装されたんだそうな。上の画像にある丸屋根は今もビザンティン様式を色濃く残しているんだけどね。

サン・マルコ寺院の4頭の馬の像

サン・マルコ寺院の正面ファサードを飾っているのは、下の画像にある4頭の馬の像だね。この像は彫刻家リュシッポス(古代の英雄アレクサンダー大王のお抱え彫刻家)の作品とされているらしい。

イタリアの水の都ヴェネツィアのサン・マルコ寺院(大聖堂)にある4頭の馬の像

この4頭の馬の像は、かつてローマにあった凱旋門を飾っていたそうな。その後、皇帝コンスタンティヌスによって新しい首都とされたコンスタンティノープルに運ばれ、そこで競馬場に置かれたらしい。ところが、西暦1204年にコンスタンティノープルを攻略した第4回十字軍によって略奪され、ヴェネツィアに持ち込まれ、このサン・マルコ寺院を飾ることになったんだ。

ところが、西暦1797年にヴェネツィアはナポレオンに屈服した。その際、ナポレオンは4頭の馬の像をフランスの首都パリに持ち帰ってしまった。そんな4頭の馬がヴェネツィアに戻ってきたのは、皇帝ナポレオンの没落後の西暦1815年のことだった。

ついでながら、このサン・マルコ寺院なんだけど、西暦1807年に大聖堂となっている。皇帝ナポレオンの命令によって大司教座がこの寺院に移された結果なんだそうな。そんなわけで、正しくはサン・マルコ大聖堂と書くべきなんだろうね。

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