ヨーロッパの歴史風景 近世編




西暦1755年、ポルトガルの首都リスボンが地震で壊滅し、ポンバル侯爵による再建が始まった。


地震に襲われたポルトガルの首都リスボンとポンバル侯爵

ポルトガル首都リスボンにあるポンバル広場には、ポンバル侯爵の像(下の画像)が立っている。このポンバル侯爵こそが西暦1755年に地震で壊滅したリスボンの再建を仕切った人物なんだそうな。(侯爵となったのは地震から20年後の西暦1770年のことなんだけど、ここではポンバル侯爵と書くことにしよう。)

ポルトガルの首都リスボンのポンバル侯爵広場に立つポンバル侯爵像

このポンバル侯爵ことセバスチャン・デ・カルヴァーリョは、リスボンの小貴族の出身だった。西暦1738年にはイギリスの首都ロンドン駐在のポルトガル大使となっている。西暦1750年にはポルトガル王ジョゼ1世によって外交と戦争を担当する大臣に任じられ、その後は次第に国政全般を委ねられるようになっていった。そして西暦1755年、リスボンを大地震が襲った。

地震によって壊滅したリスボン

強烈な地震に襲われたポルトガルの首都リスボンでは、建物の殆どが崩壊したらしい。つぶれた建物の下敷きになって即死した人々や地震の後で発生した火災で焼死した人々を含め、数万人(あるいは10万人近く)の人々が亡くなったんだそうな。

国政を委ねられていたポンバル侯爵は、直ちに被災者の救援と犠牲者の水葬に取り掛かり、リスボン市内の秩序を維持する措置を執ったらしい。続いて首都の再建だ。広くて真っ直ぐな道路を碁盤目状に走らせ、ところどころに広場を設けた。それが今のリスボンの街並みの基礎となっている。

ポルトガルの首都リスボンに昔の姿を残すアルファマ地区の路地

但し、アルファマ地区(上の画像)は例外なんだそうな。かつて高級住宅地だったアルファマ地区の建物はリスボン地震でも倒壊せず、ポンバル侯爵による再開発は行われなかった。故に昔の街の面影がここには残っているらしい。ついでながら、北アフリカからイベリア半島に上陸したイスラム教徒支配下のリスボンの中心がこのあたりだったそうな。

地震によって被害が生じたのはリスボンだけじゃなかった。初代アヴィス朝ポルトガル王ジョアン1世大航海時代最盛期のマヌエル1世にゆかりのシントラ王宮でも、塔が崩壊するなどの被害があったらしい。バターリャ修道院(勝利の聖母マリア修道院)ジェロニモス修道院にも地震は爪痕を残したんだそうな。

地震の後のリスボンを襲った津波

地震による建物の倒壊から逃れた人々は、リスボン市内を流れるテージョ川のほとりなどのひらけた土地に避難した。ところが、震源地であるリスボンの南西の大西洋からは、津波が押し寄せて来たんだ。津波はテージョ川を遡って街に襲い掛かった。その津波によって1万人以上もの人々が犠牲になったらしい。

ポルトガルの首都リスボンを流れるテージョ川にあるベレンの塔

上の画像はリスボンを流れるテージョ川に立つベレンの塔なんだけど、津波はこのベレンの塔も襲ったんだろうね。

津波が襲ったのはリスボンだけじゃなかった。イギリスやアイルランド、更には北欧やアフリカにも津波は達したらしい。

リスボン地震からの復興とポンバル侯爵のその後

ケルス宮殿(下の画像)の建築工事は西暦1747年に始められている。そしてリスボン地震が起き、ケルス宮殿を担当していた建築家は首都リスボンに呼び寄せられた。ケルス宮殿ではなく首都リスボンの再建を担当させられたわけだ。

ポルトガルの王家ゆかりのケルス宮殿と庭園

やがてポルトガル女王マリア1世の時代にケルス宮殿は完成し、王宮とされている。でも、そのマリア1世が西暦1777年に即位してまず行ったことは、首都の再建のみならず経済改革や工業化の推進にも功績のあったポンバル侯爵の更迭だった。女王マリア1世は、前王の信頼を受けて独裁者となっていたポンバル侯爵を嫌っていたらしい。

ところが、そんなマリア1世も皇帝ナポレオンの命を受けたフランス・スペイン連合軍の侵攻を受け、ポルトガルからブラジルに逃れることになる。ポルトガルでも諸行無常の響きはあるんだね。

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