ヨーロッパの歴史風景 先史・古代編




紀元前 15年、古代ローマ帝国がアウグスブルクに軍団の基地を設け、ドイツ南部に進出した。


ドイツ最古の街アウグスブルク

古代ローマ帝国の北への拡大といえば、まずはガリア(今のフランス)への進出が頭に浮かぶよね。フランス南部プロヴァンス地方にあるエクサン・プロヴァンスの街が築かれたのは紀元前122年とされているし、今のフランスの首都パリが征服されたのは紀元前52年のことなんだそうな。そんなガリアから東、つまり今のドイツ方面に向かって勢力を広げていくのは自然な流れだよね。

でも、古代ローマ帝国は他方でアルプスの東側から今のドイツ南部やオーストリア方面にも進出して行ったんだ。かくして紀元前15年に基地を建設し、軍団を置いたのがアウグスタ・ウィンデリコルムだった。そのアウグスタ・ウィンデリコルムを中心として、ラエティア属州が設けられた。ちなみに、当時の古代ローマ帝国の支配者は初代皇帝アウグストゥスだった。

ドイツのバイエルン州の街アウグスブルクの市庁舎と双頭の鷲の紋章

そのアウグスタ・ウィンデリコルムから変化して、今はアウグスブルクと呼ばれている。ドイツ南部バイエルン州の主要都市の一つだね。ドイツでも最も歴史の古い街の一つとされているんだそうな。上の画像はアウグスブルクの市庁舎の一部なんだけど、描かれている双頭の鷲は神聖ローマ帝国とハプスブルク家の紋章だったとか。

ウィーンの要塞化

アウグスブルクにおける基地建設と同じ年、古代ローマ帝国はウィーン(今のオーストリアの首都)をも要塞化したらしい。北方の蛮族に対する守りを堅める為の措置だったらしい。

オーストリアの首都ウィーンの街並み

ちなみに、古代ローマ帝国時代のウィーンは、ウィンドボナと呼ばれていた。ケルト系の名前だと考えられている。ボナとはケルト語で街を意味する言葉なんだそうな。そのウィンドボナが変化して今の都市名のウィーンとなったんだね。

ザルツブルクの支配

その頃、今のザルツブルクのあたりにはケルト系のノリクム王国があった。そのノリクム王国は紀元前16年にイタリア方面に進出しようとしたらしい。しかし、古代ローマ帝国軍に敗れ、紀元前14年にはザルツブルクも征服され、ノリクム属州が置かれている。

但し、当時のザルツブルクの街はユリーウムと呼ばれていたらしい。でも、ユリーウムは古くからの岩塩採掘の中心地だった。そんなわけでザルツブルクと呼ばれるようになる。言うまでもなく、ザルツは塩、ブルクは城砦・街を意味する言葉だよね。

オーストリアの街ザルツブルクの大聖堂

その後、ザルツブルクは中世におけるドナウ川流域のスラヴ人に対するキリスト教の布教活動の中心となったそうな。上の画像はそんな街の大聖堂の様子なんだ。ちなみに、この街はかつてドイツのバイエルンの一部だった。が、ナポレオン没落後のウィーン会議によってオーストリアに併合されている。

古代ローマ帝国のドイツ進出の挫折

かくして初代皇帝アウグストゥスの治下、ライン川方面に加えてアルプスの東側においても、古代ローマ帝国は今のドイツ方面への進出の足がかりを築いていった。ところが、西暦9年には手ひどい挫折を味わうことになる。アルミニウス指揮下のゲルマン系の人々との戦いに惨敗し、総督ウァルス指揮下の古代ローマ帝国軍は壊滅してしまったらしい。その結果、ゲルマン系の人々がライン川を越えてガリアに侵入してくる懸念が高まったらしい。

ドイツ南部周辺の略図

しかしながら、古代ローマ帝国はライン川周辺の防衛線を維持することに成功し、危機を乗り越えることができた。西暦10年にゲルマニア総督として派遣されたティベリウスの貢献だった。そのティベリウスはやがて第2代の皇帝となっている。

ハイデルベルクへの進出、そして後退

態勢を立て直した古代ローマ帝国は再び勢力の拡大に乗り出した。西暦70年にはハイデルベルクに砦を築いている。(下の画像はハイデルベルクの街の街の様子。)

ドイツの街ハイデルベルクの街並み

しかし、3世紀には古代ローマ帝国の勢力範囲は縮小に転じたらしい。ゲルマン系の人々の圧力を受け、ガリア方面の防衛線はライン川まで後退している。5世紀半ばにはアウグスブルクはフン族によって奪われ、やがてゲルマン系の人々が進出。5世紀後半にはザルツブルクもゲルマン系の人々によって占領されたらしい。

そして6世紀、今のドイツ南部にはゲルマン系マルコマンニ族が進出し、先住のケルト系の人々や古代ローマ系の人々を吸収し、バイエルン族が成立したんだそうな。

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