ヨーロッパの歴史風景 先史・古代編




紀元前 19年、古代ローマ帝国によって、フランス南部プロヴァンス地方の街ニームの近くにポン・デュ・ガール水道橋が建設された。


フランス南部プロヴァンス地方にあるポン・デュ・ガール 水道橋

古代ローマ帝国に興味があるならば、まず行きたい場所はイタリアのローマかな。円形闘技場(コロッセオ)などのあるフォロ・ロマーノは見ないわけにはいかないもんね。

では、その次に見に行くべき場所はどこか。いくつか候補地はあるだろうけど、その一つがフランス南部プロヴァンス地方にある古代ローマ帝国時代の水道橋ポン・デュ・ガールじゃないかな。

フランス南部プロヴァンス地方にあるポン・デュ・ガール水道橋

上の画像は、そのポン・デュ・ガールの下層の上の様子なんだ。下層に乗っている中層は高さ20メートル、その上に乗っている上層は高さ7メートル。つまり、この下層の上の構築物の高さは27メートルあるというわけだ。現代のビルにすれば、6階あるいは7階の屋上くらいかな。

しかも、この下層自体が川面からの高さは22メートルというから、ビルの5階の屋上くらいだよね。つまり、5階建てのビルの屋上に6階建てのビルが建っている様子に近いのが、上の画像の風景というわけだ。それが2千年も前の構築物なんだから、古代ローマ帝国の建設技術には驚いてしまうよね。

ちなみに、フランスの隣のスペインの首都マドリッドからもほど近いセゴビアでも水道橋を見ることができる。このポン・デュ・ガールの水道橋よりもちょいと小さくて時代も下るみたいなんだけどね。スペインにはカタルーニャ地方の州都バルセロナにも古代ローマ帝国時代の水道橋があったそうな。

全長 50kmの水路の一部がポン・デュ・ガール水道橋

ガルドン川にかかるポン・デュ・ガール水道橋の長さは、上層部で275メートルもあるらしい。でも、この水道橋は全長 50kmの水路のほんの一部に過ぎないんだ。

フランス南部プロヴァンス地方にあるポン・デュ・ガール水道橋

その全長 50kmの水路の水源から末端までの高さの差は 17メートル。それを 50kmで割ると、1kmあたり 34cmの高さとなる。つまり、それだけ微妙な傾斜で 50kmの長さの水路が築かれた。それが日本で言えば弥生時代のものなんだ。

皇帝アウグストゥスの副官アグリッパとポン・デュ・ガール水道橋

そんな古代ローマ帝国の技術の傑作とも言うべきポン・デュ・ガール水道橋なんだけど、最近は異説はあるとはいうものの、古代ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥスの副官にして娘婿だったアグリッパが紀元前19年に造ったものとされている。

そのアグリッパは、ローマに残るパンテオンを建てたことでも知られているね。但し、やがて彼のパンテオンは焼け落ち、今も残るパンテオンは皇帝ハドリアヌスによって建てられたものなんだけどね。(皇帝ハドリアヌスはスコットランド国境に残るハドリアヌスの長城を築いた人物。)

話をポン・デュ・ガール水道橋に戻そう。その後、9世紀までは水を流していたと考えられている。つまり、この地域がイベリア半島から侵入してきたサラセン人に襲撃されていた頃までは水路として機能していたというわけだね。(プロヴァンス地方のサラセン人はプロヴァンス伯ギョーム1世によって10世紀後半に駆逐された。)

フランス南部プロヴァンス地方にあるポン・デュ・ガール水道橋と樹齢千年のオリーヴの木

その後のポン・デュ・ガール水道橋は、ガルドン川を渡る歩行者の為の橋として使われた。近くの領主・司教は、橋の維持をする代わりに通行料を徴収することを認められていたんだそうな。(上の画像に見える大きなオリーヴの木は樹齢千年らしい。水道橋を渡る旅人たちを眺めてきたんだろうね。今は無数の観光客に驚いているかもしれないけど。)

観光といえば、このポン・デュ・ガール水道橋は昔から多くの人々を集めてきた。例えば、西暦1564年にやって来たのは、フランス王シャルル9世と王母カトリーヌ・ド・メディチだった。西暦1660年にはフランス王ルイ14世太陽王ニームから足を伸ばしてわざわざここまで来たらしい。この風景にはそれだけの価値があるよね。

ポン・デュ・ガール水道橋が水を供給した街ニーム

そんなポン・デュ・ガール水道橋を含む水路が水を供給していたのが、プロヴァンス地方の街ニームだった。(下の画像は、ニームの街に残る古代ローマ帝国時代の円形闘技場。今は闘牛場としても使われている。)

フランス南部プロヴァンス地方の街ニームにある古代ローマ帝国時代の円形闘技場

ついでながら、このニームの街にはメゾン・カレと呼ばれる古代ローマ帝国時代の神殿も残っている。その神殿に祀られているのは、皇帝アウグストゥスの娘ユリアとポン・デュ・ガール水道橋を造ったアグリッパの子供たち二人だとされているんだ。

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