ヨーロッパの歴史風景 中世編




西暦1355年、フランス王ジャン2世がペルージュの街をサヴォワ公に売却した。


フランス南東部にある中世の街ペルージュ

フランス第2の都市リヨンから車で40kmほど北東に向かった小高い丘の上に、中世の面影を残すペルージュという小さな街がある。

フランス南東部にある中世の街ペルージュの通り

上の画像がそのペルージュの通りの様子なんだけど、この街の風景だけじゃなくて、歴史もまた興味深いんだ。

古代から中世にかけてのペルージュの街

このペルージュという街の名前なんだけど、イタリアにあるペルージャと似ているでしょ。それもそのはず、この二つの街は親戚と言えなくもない。もともとガリア(今のフランス)に住んでいたゴール人の一部がイタリアに移住して作った街がペルージャ。ところが古代ローマ帝国が強大になり、イタリアに住みにくくなった為にペルージャからガリアに戻った人々が築いたのがペルージュの街だった。

とはいえ、紀元前2世紀には古代ローマ帝国はエクサン・プロヴァンス(エクス)の街を築き、更に紀元前43年にはリヨン(当時はルグドゥヌム)にまで進出して、属州ガリア・ルグドゥネンシスを経営しているんだけどね。

その後のペルージュは、5世紀にはブルグント王国の支配下に入り、6世紀にはフランク王国に征服されている。下の画像のように、街の周囲を城壁で守りたくもなるよね。

フランス南東部にある中世の街ペルージュの城門

その後、ペルージュの街はフォレ伯爵の所領となっていた。ところが、西暦1167年にフォレ伯爵がペルージュの街をリヨン大聖堂(リヨンのサン・ジャン大聖堂)の大司教に売ってしまった。当時のリヨンの大司教は、ガリア(フランス)全体の首座にあり、リヨンの街もその支配下に置く強力な領主だったんだ。

ところが、ペルージュの街の人々はその売却に納得せず、リヨンの大司教が派遣した兵士たちに対して城門を閉ざし、城壁を頼りに街に立て篭もったんだそうな。でも、リヨンの大司教は破門を武器にペルージュの人々を脅し、とうとう城門を開かせたらしい。中世の人々にとって、キリスト教の教会から破門されることは地獄への特急券のようなものだったんだろうね。

ペルージュの街をフランス王ジャン2世がサヴォワ公に売却

その後、ペルージュの街の持ち主は何度か換わっていったらしい。そして西暦1349年にはフランス王太子ジャンが領主となった。その王太子は翌年には即位してフランス王ジャン2世になった。つまりは、このペルージュの街の領主はフランス王というわけだ。(下の画像はペルージュの街を見下ろす石の塔。)

フランス南東部にある中世の街ペルージュの石の塔

ところが、その当時のフランスはイングランドとの百年戦争の最中だった。お金を必要とするフランス王ジャン2世は、ペルージュの街をサヴォワ公に売ってしまった。というわけで、ペルージュの街はしばしサヴォワ公の領地となるんだ。

ちなみに、ペルージュを売り渡して軍資金を作ったフランス王ジャン2世は、イングランドの黒太子(ブラック・プリンス)エドワードと戦って敗れ、ロンドンを流れるテムズ川のほとりのロンドン塔に幽閉されている。軍資金が無くて戦えなかった方が良かったのかも。

ペルージュの街とサヴォワ公、ブルゴーニュ公、フランス王

その後しばらくはペルージュの街の領主はサヴォワ公だった。が、15世紀にサヴォワ公はディジョンに首都を置いたブルゴーニュ公国のシャルル突進公と同盟を結んだ。その結果、ペルージュの街はブルゴーニュ公と対立していたフランス王ルイ11世の軍の攻撃を受けている。

フランス南東部にある中世の街ペルージュのホテルの寝室

その後もペルージュの街はサヴォワ公とフランス王との間で争われ、最終的には西暦1601年にフランス王アンリ4世の手に落ちたんだそうな。(上の画像は中世の面影を残すペルージュのホテルの寝室。ここも中世の雰囲気たっぷりだった。)

ちなみに、今ではフランスの一部と思われている土地も歴史的にはそうではなかったってことは少なくないよね。例えば、マルセイユセナンク修道院のあるフランス南部プロヴァンス地方なんて西暦1480年にプロヴァンス伯ルネ・ダンジューが亡くなった後にフランスに帰属している。

アルザス地方の中心都市ストラスブールだって、西暦1681年にフランス王ルイ14世太陽王が奪い取ったもの。ちなみに、フランス王ルイ14世は西暦1706年にはコート・ダジュールにあるニース近くの岩山の上の鷲の巣村エズの城壁を破壊している。そのニースやエズがフランス領となったのは西暦1860年のことだった。そんなこんなで今のフランスが形成されたわけだ。

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