ヨーロッパの歴史風景 近代・現代編




西暦 1944年6月、デンマークと同君連合にあったアイスランドが独立した。


独立の際に定められたアイスランドの国旗

北大西洋に浮かぶ島国アイスランドの国旗 ・・・ と言われても頭に浮かぶ人は少ないだろうね。下の画像に見えるのがアイスランドの国旗なんだけど、この旗はアイスランドを構成する三つの要素を象徴しているんだそうな。まず青地は北大西洋の海原、白い十字は島を覆う雪と氷、赤字は島のあちこちにある火山。なるほど、国の特徴を表現した国旗なんだね。

独立の際に定められたアイスランドの国旗

そんな国旗がアイスランド共和国の国旗と定められたのは西暦1944年のこと。まさに独立の際に制定された法律によって新しく成立した共和国の国旗とされたんだそうな。

アイスランドの独立運動の始まり

ノルウェー系ヴァイキングたちがアイスランドへの植民を始めたのは西暦874年頃のこととされている。ヴァイキングたちは島のあちこちに集落を作り、誰にも支配されずに暮らしていた。

ところが、西暦1262年には彼らの故地であるノルウェー王の支配下に入ってしまう。更には西暦1380年にはデンマーク王に服属した。以後のアイスランドはデンマーク王の支配下にあったんだ。

アイスランドには西暦1056年に最初の司教区が置かれ、以後はローマ・カトリックが信仰されていた。ところが、16世紀の半ばにデンマーク王が兵士を送り込み、ルター派への改宗を強制している。更に17世紀初頭には貿易はデンマークの商人を通じて行うものとされたんだ。

そして西暦1800年、アイスランドのアルシングが廃止された。アルシングは島への植民が始まって間もない西暦930年に開設された歴史ある国会だった。かくしてアイスランドは様々な側面でデンマークの支配の下に置かれていたわけだ。

アイスランドの紙幣に描かれた独立運動の指導者ヨン・シグルズソンとアルシング

ところが、西暦1843年、アルシングが復活した。といっても、立法機関ではなく、諮問議会としてのものだったけどね。それでも、そのアルシングを後ろ盾にアイスランドの独立運動が展開された。その指導者がヨン・シグルズソンだった。上の画像はアイスランドの紙幣なんだけど、描かれているのはヨン・シグルズソン、右下にはアルシングの議事堂も描かれている。

アイスランドの独立

西暦1854年、デンマーク商人による貿易の独占が廃止され、アイスランドの人々は自らの手で貿易を行うことが許された。西暦1874年、デンマーク憲法に付随したものではあったけれども、アイスランド憲法が制定された。諮問議会に過ぎなかったアルシングに立法権・財政権が与えられた。但し、デンマーク王には拒否権が認められたけどね。司法権についてはデンマークのコペンハーゲンにある最高裁の下に置かれた。

西暦1904年、デンマークはアイスランドの要求を受け入れ、派遣していた総督を廃止し、レイキャビクに置かれた政府による自治が認められた。西暦1905年、スウェーデン王の支配下にあったノルウェーが独立し、アイスランドの独立運動を刺激した。

西暦1907年、デンマーク王フレゼリク8世がアイスランドを訪問し、両国合同の憲法修正委員会を設置した。西暦1914年、第一次世界大戦が勃発し、デンマークとの連絡を断たれたアイスランド独自の行動の機会が増した。

西暦1918年、両国の新たな連合条約が成立し、同君連合下でのアイスランドの主権と独立が認められ、その意向に沿ってデンマークが外交と防衛を行うこととされた。

西暦1940年、ナチス・ドイツがデンマーク、更にはノルウェーを占領。ナチス・ドイツの力がアイスランドに及ぶことを怖れたイギリスがアイスランドを占領した。翌年にはイギリスから引き継いだアメリカが軍を駐留させた。

西暦1944年、国民投票において 97パーセントを越える賛成を得て、デンマークとの連合条約の解消が宣言され、アイスランド共和国が独立した。デンマーク王クリスチャン10世からは独立を祝う電報が送られたそうな。

アイスランドの切手に描かれた独立記念日の様子とヨン・シグルズソンの像

独立に際し、このページの冒頭の画像に見る旗が国旗と定められた。独立記念日は6月17日とされたが、その日は19世紀の独立運動の指導者だったヨン・シグルズソンの誕生日だった。上の画像はアイスランドの切手なんだけど、独立記念日の様子を描いている。また左手に描かれているのは、ヨン・シグルズソンの銅像なんだ。

その後のアイスランド

というわけで、7世紀ぶりに独立を回復したヴァイキングの国アイスランドなんだけど、その後も国際社会の大波が北大西洋の島に打ち寄せている。西暦1922年に同国は有事における永世中立を宣言していたんだけど、東西冷戦の激化には抗えず、西暦1949年には NATO 北大西洋条約機構に参加し、翌々年にはアメリカ軍が駐留している。

西暦1992年には捕鯨の停止を決めた国際捕鯨委員会を脱退している。その4年後には再加盟しているけど、更に4年後には商業捕鯨を再開した。ちなみに、アイスランドは12世紀からクジラを捕っているという歴史ある捕鯨国なんだそうな。(下の画像は首都レイキャビクのレストランで食べたクジラの刺身。)

アイスランドの首都レイキャビクのレストランで食べたクジラの刺身

アイスランドは西暦2009年に EU ヨーロッパ連合への加盟申請を行っている。しかし、西暦2015年にはその加盟申請を取り下げている。ヨーロッパを揺るがす難民問題などの波及を怖れたのかもしれない。あるいは島を取り囲む豊かな漁場にヨーロッパの多くの漁船が押し寄せることを心配したのかもしれない。いや、再開した商業捕鯨を停止させられることを懸念した可能性もある。

そんなこんなで人口30万人あまりの小さな国アイスランドは、北大西洋で独自の道を歩んでいるんだ。もちろん、EUの通貨 ユーロではなく、独自の通貨 アイスランド・クローナが流通しているんだ。

アイスランドの海賊党

余談なんだけど、ヴァイキングが築いた国アイスランドのアルシング(国会)には、海賊党というユニークな名前の政党が議席を持っている。西暦2012年に結党され、翌年の総選挙で3議席を獲得したんだそうな。彼らの主張の中には直接民主主義も含まれているんだけど、EU ヨーロッパ連合への加盟には必ずしも反対はしていないそうな。

その海賊党なんだけど、西暦2016年10月に行われた総選挙においては、得票率で第3位、議席数では第2位に躍進したらしいよ。

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