ヨーロッパの歴史風景 近世編




西暦1565年、イタリアの古都フィレンツェを流れるアルノ川にかかるヴェッキオ橋にヴァザーリの回廊が完成した。


フィレンツェのヴェッキオ橋とヴァザーリの回廊

イタリアの古都フィレンツェに旅したならば、ドゥオモ(大聖堂)ヴェッキオ宮殿ウフィツィ美術館は必見だよね。でも、せっかくならばアルノ川の南岸にあるピッティ宮殿(パラティナ美術館)にも入りたいよね。そのアルノ川南岸に向かう時に歩きたいのがヴェッキオ橋だね。

イタリアの古都フィレンツェを流れるアルノ川にかかるヴェッキオ橋とヴァザーリの回廊を上から眺めた

上の画像がそのヴェッキオ橋なんだけど、橋の上にはずらっとお店が並んでいる。そして上の画像の左手にはお店の上に長い白壁の回廊が見えているよね。これがヴァザーリの回廊なんだ。西暦1565年に完成したものなんだそうな。

フィレンツェを流れるアルノ川とヴェッキオ橋

このヴェッキオ橋のあるあたりは、フィレンツェを流れるアルノ川の川幅が最も狭くなっている場所なんだそうな。そこに最初の橋がかけられたのは古代ローマ帝国時代だとも言われている。(下の画像はヴェッキオ橋の上から眺めたアルノ川の様子。)

イタリアの古都フィレンツェを流れるアルノ川をヴェッキオ橋の上から眺めた

ところが、アルノ川のこの地点にかけられた橋は洪水によって何度も流されたらしい。西暦1117年に流されている。更には西暦1333年にも流されている。そして西暦1345年に再建されたのが、今のヴェッキオ橋なんだ。

フィレンツェの支配者メディチ家とヴェッキオ宮殿

ナポリの王位を主張したフランス王シャルル8世のイタリア侵入の際にフィレンツェを追放されたメディチ家だったけど、後にジョヴァンニ・デ・メディチ(ローマ教皇レオ10世となった)によってフィレンツェに復帰している。更にはフィレンツェ大公として街を支配することになったわけだ。

イタリアの古都フィレンツェのボボリ庭園のカフェから眺めたドゥオモ(大聖堂)とヴェッキオ宮殿

そんなメディチ家のフィレンツェ大公の公式の住居が、アルノ川の北岸にあるヴェッキオ宮殿だった。上の画像はボボリ庭園のカフェから眺めたフィレンツェ中心部なんだけど、左手にはクーポラのあるドゥオモ(大聖堂)、右手に塔のあるヴェッキオ宮殿が見えている。

ピッティ宮殿とヴァザーリの回廊

西暦1537年、フィレンツェ大公コシモ1世(西暦1569年にはトスカナ大公となった)が即位した。彼は病弱な妻エレオノーラ・ディ・トレドの為に、アルノ川南岸にあるピッティ宮殿(下の画像)を買い取ったんだ。西暦1549年のことだった。

イタリアの古都フィレンツェにあるメディチ家ゆかりのピッティ宮殿

やがてフィレンツェ大公と彼の家族はピッティ宮殿に移り住んだ。でも、大公の公式の住居はアルノ川の北岸にあるヴェッキオ宮殿だったし、統治の中心は今のウフィツィ美術館にあった。というわけで、彼はヴェッキオ橋を渡ってアルノ川の南岸から北岸に通うことになった。

ところが、メディチ家の嫡流(ジョヴァンニ・ディ・ビッチの嫡男の国父コジモの子孫)が断絶した後に、傍流(国父コジモの弟のロレンツォの子孫)から出てフィレンツェ大公位を継承したコシモ1世には敵も多かったらしい。彼の統治の初期には名門ストロッツィ家などの反メディチ派が挙兵したこともあったからね。

そんなわけで、コシモ1世にはヴェッキオ橋を渡ってアルノ川の北岸に向かう途中で暗殺される危険があったんだそうな。そこで当時の著名な建築家にして芸術家のヴァザーリに命じて、ヴェッキオ橋の上に安全な回廊を築かせた。

その結果、西暦1565年に完成したのが、今もヴェッキオ橋の上に残るヴァザーリの回廊というわけだ。暗殺の危険に怯える権力者と意欲的な建築家との間の微妙な架け橋が、このヴァザーリの回廊というわけだね。

ちなみに、この回廊を作ったヴァザーリはフィレンツェのドゥオモ(大聖堂)の天井画「最後の審判」を描いた人物でもある。また西暦1562年に開設されたアカデミア美術学校の初代校長にもなったらしい。(アカデミア美術学校には後にアカデミア美術館が併設された。今はそこでミケランジェロのダヴィデ像を見ることが出来る。)

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