ヨーロッパの歴史風景 先史・古代編




西暦452年、フン族の侵入による混乱を逃れた人々が、今のヴェネツィア近辺のラグーンの島々に移り住んだ。(イタリア)


水の都ヴェネツィア

水の都ヴェネツィアといえば、イタリアを代表する観光地の一つであり、海辺や運河の風景の美しい歴史ある街だよね。

朝のヴェネツィアの風景(イタリア)

上の画像はそんなヴェネツィアの朝の風景なんだ。でも、人々は好き好んでこのヴェネツィアに住み始めたわけじゃなかった。

西ローマ帝国末期の混乱とヴェネツィア

かつて古代ローマ帝国は地中海世界を制覇したんだけど、やがて帝国は東西に分かれている。そして5世紀に入ると、西ローマ帝国は衰退の一途を辿っていく。

西暦402年には西ゴート族がイタリアに侵入し、当時の首都ミラノが包囲され、皇帝ホノリウスは首都をラヴェンナに移している。更に西暦410年にはローマまでも西ゴート族の略奪を受けている。

イタリア北部略図

そして西暦452年、あのアッティラに率いられたフン族がイタリアに侵入してきた。彼らは前年にガリア(フランス)に進出していたんだけど、西ローマ帝国と西ゴート族の連合軍に阻まれ、矛先を変えてイタリアに向かい、各地で略奪を行ったらしい。その結果、多くの難民が混乱を避け、今のヴェネツィア近辺のラグーンにある島々や湿地帯に移り住んだというわけだ。

続いて西暦598年にはロンバルド族がイタリアに侵入し、更に多くの人々がヴェネツィア近辺に島々や湿地帯に移り住んだんだそうな。

水の上に築かれた街 ヴェネツィア

とはいえ、ラグーンの湿地帯や島々の上に街を築くのは大変なことだった。大量の丸太を運び込み、その丸太を湿地帯や浅瀬に打ち込み、ようやくその上に建物を建てることが出来たんだそうな。

そして西暦697年、ビザンティン帝国がヴェネツィアを治める総督(ドージェ)を任命した。更に西暦727年、ヴェネツィアの人々は自らのドージェを選出している。ビザンティン帝国から自立し始めたわけだね。

西暦810年、フランク王国のカール大帝(シャルルマーニュ)の息子ピピンがイタリアに侵入し、ヴェネツィアに向かってきた。フランク王国によるヴェネツィア包囲は5ヶ月に及んだけれども、海に守られたヴェネツィアを攻略することはできなかった。不便な島々での暮らしに耐えた甲斐があったというわけだね。

ヴェネツィア近辺略図(イタリア)

そんな歴史のあるヴェネツィア周辺のラグーンには、200近い島々があり、百数十もの運河が人々の暮らしを支え、400以上もの橋が架けられているんだそうな。

ヴェネツィアの洪水

でも、水の都ヴェネツィアは必ずしも住みごごちの良い場所とは言えないみたい。移動や輸送の手段は限られている。ヴェネツィア本島内では車や自転車は使えないんだ。観光客に人気のゴンドラや水上タクシーが必要とされるわけだ。また、夏には海水の臭いがきついこともある。しかも、時には洪水に襲われることもあるんだ。

洪水のヴェネツィアのサン・マルコ寺院の前の様子(イタリア)

上の画像はサン・マルコ寺院の前の様子なんだけど、しばし押し寄せる海水の為に人々は渡り板の上を歩くことを余儀なくされているんだ。東南の風(シロッコ)が吹き、低気圧が接近した状態に加えて大潮の時期が重なれば、潮位が高くなって洪水となってしまうらしい。

産業化に伴う地下水の汲み上げが、打ち込まれた杭の上に築かれたヴェネツィアの沈下を加速させているらしい。加えて、地球の温暖化はヴェネツィアの水没を惹き起こすと懸念されているんだそうな。フン族などの蛮族の侵入から逃れた人々が築いたヴェネツィアを、現代文明が滅ぼしてしまうのかもしれないね。

ヴェネツィアで進むモーゼ計画

西暦2012年11月にもヴェネツィアは洪水に襲われ、街の中心部の3分の2で浸水したそうな。そんなこともあり、ヴェネツィアの可動式の防水壁で囲んで洪水を防ごうというモーゼ計画が進められているらしい。防水壁は西暦2014年に完成する ・・・ はずだった。が、未だに防水壁が完成したというニュースを目にしてはいないね。

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