ヨーロッパの歴史風景 中世編




西暦1363年、フランスでヴァロワ家系初代ブルゴーニュ公フィリップ・ル・アルディ大胆公(豪胆公)登場。


ブルゴーニュ総督フィリップ

西暦1363年6月、フランス王ジャン2世善良王の息子であるフィリップがブルゴーニュの総督に任命された。その翌月には新任のブルゴーニュ総督フィリップは古都ディジョンで開催されたブルゴーニュ各地の代表者が集まる会議に列席したんだそうな。

フランスのブルゴーニュ地方にあるグラン・クリュ・ワインの村ジュヴレ・シャンベルタンのブドウ畑

そのブルゴーニュなんだけど、フランス南部プロヴァンス地方の街エクサン・プロヴァンス(エクス)から北上した古代ローマ帝国が紀元前1世紀には進出し、ブドウ栽培などが盛んだったらしい。(上の画像はブルゴーニュを代表するワイン産地ジュヴレ・シャンベルタン村ブドウ畑。)

その後はゲルマン系ブルグント王国の領地となり、やがてクローヴィスのフランク王国に吸収され、シャルルマーニュ(カール大帝)の時代を経て、カペー朝フランク王国の時代にはカペー家系のブルゴーニュ公家がブルゴーニュの領主だった。

ところが、西暦1361年には最後のカペー家系ブルゴーニュ公フィリップ・ド・ルーブルが亡くなり、カペー家系ブルゴーニュ公家が断絶した結果、ヴァロワ家系のフランス王ジャン2世がブルゴーニュ公領を継承したわけだ。

ちなみに、それに先立つ西暦1328年にはカペー家系のフランス王家も断絶し、ヴァロワ家のフィリップ6世がフランス王となり、それが後のフランスとイングランドの百年戦争の背景の一つになったわけだけど。

ヴァロワ家系初代ブルゴーニュ公フィリップ・ル・アルディ大胆公

フランス王ジャン2世善良王は、ブルゴーニュ総督にした息子フィリップをブルゴーニュ公にするつもりだったみたい。でも、それを公式のものにする前に捕われていたロンドンで亡くなってしまった。

そしてフィリップの長兄がフランス王シャルル5世として即位した。そのシャルル5世がブルゴーニュ総督となっていた弟のフィリップをブルゴーニュ公として正式に叙任したわけだ。

フランスのブルゴーニュ地方の古都ディジョンのサン・ベニーニュ大聖堂内部

西暦1364年11月、ブルゴーニュの中心都市ディジョンのサン・ベニーニュ大聖堂(上の画像)でブルゴーニュの人々の忠誠の誓いを受け、ヴァロワ家系初代ブルゴーニュ公フィリップ・ル・アルディ大胆公(豪胆公)が公式に誕生したわけだ。

大胆公(豪胆公あるいはル・アルディ)と呼ばれたブルゴーニュ公

フランス王ジャン2世には4人の息子がいた。ブルゴーニュ公となったフィリップはその末っ子だった。末っ子は可愛いもんだと言えばそれまでなんだけど、ジャン2世が末っ子のフィリップに豊かなブルゴーニュを与えようとしたことには理由があったんだ。

西暦1356年のこと、フランス王ジャン2世はイギリスのブラック・プリンス(黒太子)エドワードの軍と戦って敗れている。その際に若干14歳のフィリップは父を守って勇敢に戦ったらしい。そんなわけでジャン2世はフィリップに眼をかけていたんだそうな。

そんなフィリップ・ル・アルディ大胆公(豪胆公)は、ブルゴーニュ公となってからも百年戦争でイングランド相手に奮戦したらしい。

フランスのロワール川のほとりにあるブロワ城

西暦1373年にイングランドのランカスター公ジョン・オブ・ゴーントがカレーに上陸し、フランスに侵攻した際には、ブルゴーニュ公フィリップ大胆公はロワール川流域でイングランド軍と戦ったんだそうな。(上の画像はロワール川とそのほとりのブロワ城の風景。)

話はちょいと前後するんだけど、このブルゴーニュ公フィリップ大胆公は西暦1369年に結婚している。その相手がフランドル伯の娘だった。実はこの結婚がやがてブルゴーニュ公国がネーデルラント(ベルギーオランダ)に勢力を広げていく基礎になったんだ。長くなるから詳しくは別の機会に書くけれども。

ブルゴーニュ公フィリップ・ル・アルディ大胆公とフランス王家

イングランド軍は西暦1380年に再び攻勢をかけてきた。その際にはブルゴーニュ公フィリップ・ル・アルディ大胆公(豪胆公)は、シャルトル大聖堂(下の画像)で有名なシャルトル付近でイングランド軍と奮戦していた。

フランスのシャルトル大聖堂

そんなブルゴーニュ公フィリップの許に届いた報せは不吉なものだった。兄であるフランス王シャルル5世の病状が悪化したらしい。慌ててパリに向かうブルゴーニュ公フィリップ大胆公。その隙にイングランド軍はブルターニュに侵入したんだ。

間もなくフランス王シャルル5世は亡くなり、その息子シャルル6世がフランス王として即位した。でも、新王の叔父にあたるブルゴーニュ公フィリップ・ル・アルディ大胆公(豪胆公)とフランス王家との関係は次第に微妙なものになっていく。その話はまた別のページに譲るけれども。

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