ヨーロッパの歴史風景 中世編




西暦1369年、ベルトラン・デュ・ゲクランに支援された初代トラスタマラ朝カスティーリャ王エンリケ2世が即位した。


初代トラスタマラ朝カスティーリャ王エンリケ2世の即位

14世紀から15世紀にかけてはイギリスとフランスとの間の百年戦争が長く続いたよね。その戦いの大部分がフランスを舞台としていたわけだ。でも、その場外乱闘とでも言えるような戦いが他の国を舞台でも起こったんだ。

その一つがカスティーリャを舞台とした王位継承争い。ペドロ1世とエンリケ2世との間の戦いだった。ペドロ1世を支援したのがイギリスの黒太子エドワードであり、対するエンリケ2世を支援したのがフランスのベルトラン・デュ・ゲクランだったんだけど、それもこの戦いが百年戦争の場外乱闘だったからなんだ。

スペインのセゴビアの世界遺産アルカサル遠望

結論から言えば、西暦1369年に戦いに敗れたペドロ1世が落命し、初代トラスタマラ朝カスティーリャ王エンリケ2世が即位している。上の画像は、そのエンリケ2世が改築した世界遺産セゴビアのアルカサルなんだ。(古代ローマ帝国時代の水道橋のあるセゴビアの街にある歴史あるお城だね。)

カスティーリャ王ペドロ1世の統治

西暦1350年、カスティーリャ王アルフォンソ11世が亡くなった。王位を継承したのは嫡子のペドロ1世だった。他方、先王の庶子でトラスタマラ家の養子となっていたエンリケ2世(ペドロ1世の異母兄)は、王位を脅かしえる人物とみなされて命を狙われた為、国外に逃れたらしい。

ところが、残ったカスティーリャ王ペドロ1世は、国外ではアラゴン王ペドロ4世との間で「二人のペドロの戦争」を始め、国内では有力貴族たちを圧迫した。更にユダヤ人を重用したことも人々の反発を招いたらしい。

スペインの古都トレド

カスティーリャ王ペドロ1世が内外で孤立している状況を見たエンリケ2世は、帰国して反乱を起こした。ペドロ1世との戦いを続けていたアラゴン王ペドロ4世はもちろん、国内の貴族たちもエンリケ2世を支持した。かくしてペドロ1世は後退を続けることになったんだ。(上の画像はペドロ1世が守れきれなかった古都トレドの風景。)

フランスのデュ・ゲクランがエンリケ2世を支援

フランスを主な舞台としていた百年戦争には、多くの傭兵たちが参加していた。でも、戦いが小康状態に陥ると、傭兵たちは仕事を失ったんだ。そんな傭兵たちはフランス各地を荒らし回っていた。そんな傭兵たちを引き連れて西暦1366年にカスティーリャに乗り込んできたのが、フランスの英雄ベルトラン・デュ・ゲクランだった。

スペインの古都グラナダにある世界遺産アルハンブラ宮殿

デュ・ゲクランは反乱を起こしていたエンリケ2世の側に立って参戦した。他方のペドロ1世は、スペイン南部アンダルシア地方古都グラナダに生き残っていたイスラム教徒のナスル朝(上の画像にある世界遺産アルハンブラ宮殿を築いた王朝)とも同盟を結んだらしい。

それでもペドロ1世の退勢は覆すことが出来ず、セビリアまで後退し、そこでも支えることが出来ず、とうとう母親の母国であるポルトガルにまで逃れたんだ。彼の母親はポルトガルの王女だったからね。但し、ペドロ1世は即位直後に母親と仲違いし、彼女をポルトガルに追い返していた。そんなわけでペドロ1世はポルトガルでも冷遇されたみたい。

イギリスの黒太子エドワードの帰国

そして西暦1366年の夏には、カスティーリャ王ペドロ1世にとって強力な助っ人が参戦してきた。百年戦争におけるイギリスの英雄ともいうべき黒太子エドワードだ。彼の活躍のおかげでペドロ1世は劣勢を跳ね返すことができ、エンリケ2世は国外に逃れることになったわけだ。

イギリスのカンタベリー大聖堂にある黒太子エドワードの武具のレプリカ

ところが、ペドロ1世は約束していた軍資金を黒太子エドワードに払わなかった。約束していた領地も与えなかった。しかも、病気になってしまった黒太子エドワードは、イギリスに帰国してしまったんだ。(上の画像はイギリスのカンタベリー大聖堂にある黒太子エドワードの武具のレプリカ。色褪せた本物の武具も展示してある。)

そして西暦1368年、再びエンリケ2世がカスティーリャに乗り込んできた。多くの街がエンリケ2世を支持したらしい。しかもフランスのベルトラン・デュ・ゲクランの軍も加勢している。

古都トレドに向かって進撃するエンリケ2世。対するペドロ1世は南へと逃れる。結局、西暦1369年にペドロ1世は戦いに敗れて落命し、初代トラスタマラ朝カスティーリャ王エンリケ2世が即位したというわけだね。

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