ヨーロッパの歴史風景 近世編




西暦1555年、傭兵隊長ジャン・ジャコモ指揮下のフィレンツェ軍がシエナを征服した。


シエナの起源はローマかエトルリアか

オオカミといえば、ローマを築いたロムスとレムスの兄弟が頭に浮かぶよね。あのオオカミに育てられたという二人だ。そんなわけで、オオカミは古代ローマのシンボルになっているわけだ。

シエナのシンボルとなっているオオカミの像(トスカナ地方、イタリア) ところが、トスカナ地方の街シエナを歩けば、右の画像にあるようなオオカミの像をあちこちで見ることになる。

というのも、シエナの人々は、古代ローマが自分達の祖先だと信じているからなんだ。

但し、イタリアの中でもトスカナ地方は古代エトルリアの勢力基盤の中心だったんだ。考古学的にはエトルリアにシエナの起源を求めるのが多数派みたいなんだけどね。

トスカナ地方の覇権を競ったシエナとフィレンツェ

フィレンツェとイタリアの略図 シエナの街は、長い間フィレンツェ(右の略図を参照)のライバルとして、トスカナ地方の覇権を競っていたんだ。

その二つの街の最初の戦いは、西暦1129年に起こったと言われている。その後、シエナとフィレンツェとは、勝ったり負けたりの歴史を繰り返すことになった。

西暦1230年、フィレンツェ軍がシエナを占領した。当時のフィレンツェは、同じくトスカナの街ピサと同盟を結んでいた。ミラノの脅威を感じていたピサは後顧の憂いをなくす必要があり、他方フィレンツェは海への出口を確保する必要があったから。

西暦1260年、シエナの西 5kmのところにあるモンタペルティにおいて、シエナ軍がフィレンツェ軍を撃ち破った。ところが、ギベリン(皇帝派)として戦ったシエナを法王庁が破門し、法王庁の金融業務はフィレンツェに委ねられることとなってしまった。

西暦1353年、衰退しつつあったサン・ジミニャーノがフィレンツェに従属した。以後、サン・ジミニャーノはシエナに対するフィレンツェの前線基地としての役割を担うようになった。

西暦1404年、フィレンツェはかつての同盟国ピサを征服し、海への出口を確保すると同時に、トスカナ地方での勢力を大きく拡大した。

西暦1555年、トスカナ大公コシモ1世の派遣した傭兵隊長ジャン・ジャコモ指揮下の軍がシエナを征服し、シエナはメディチ家の支配下に入った。しかし、シエナの残党はモンタルチーノに立て籠もり、フィレンツェに対する抵抗を続けた。

西暦1559年、モンタルチーノがフィレンツェ軍によって征服され、シエナの残党の抵抗は終息した。余談だが、このモンタルチーノは、トスカナの赤ワインを代表するブルネッロ・ディ・モンタルチーノの産地でもある。

メディチ家が手に入れたイタリア・ゴシックの華

西暦1555年にフィレンツェのメディチ家が手に入れたシエナには、「イタリア・ゴシックの華」と称されるものがある。それが14世紀に完成したシエナのドゥオモ(下の画像)なんだ。

イタリア・ゴシックの華 シエナのドゥオモ(トスカナ地方、イタリア)

余談ながら、シエナにはイタリアで最も美しいものが五つ有ると言われているらしい。まずは、上の画像にあるドゥオモ、それからカンポ広場、街並み、女性、言葉なんだそうな。残念ながら最後の一つは私には理解できないけどね。

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ローマへ移ったボルゲーゼ家とバロック芸術

ところで、フィレンツェの支配下に落ちたシエナの街を出て行った名家がある。その一つがボルゲーゼ家。彼らは一族を挙げてローマへと移っていたんだ。

やがて17世紀、ボルゲーゼ家の一人が枢機卿シピオーネ・ボルゲーゼだった。彼はまだ年若いジャン・ロレンツォ・ベルニーニの才能を認め、そのパトロンとなった。

やがてベルニーニはイタリアのバロック美術を代表する芸術家として大成する。ベルニーニはサン・ピエトロ大聖堂にブロンズのバルダッキオ(天蓋)聖ペテロの司教座(カテドラ・ペトリ)を残し、またサン・ピエトロ広場を作り上げた。

「風が吹けば桶屋・・・」風に言えば、シエナが陥落したおかげでボルゲーゼ家はローマに移り、ベルニーニはパトロンを見出し、ローマはバロック美術に飾られ、更にはボルゲーゼ美術館にバロックの作品が集まった...ということかな。

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旅行記 「エミリア・ロマーニャとトスカナ(イタリア)」
(ボローニャ、ラヴェンナ、サン・マリノ、
シエナ、サン・ジミニャーノ、フィレンツェ)


旅行記 「カンパーニャとローマ・ヴァティカン(イタリア)」
「第四部 ローマ・ヴァティカン編」

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