ヨーロッパの歴史風景 先史・古代編

	西暦69年、古代ローマ帝国においてフラウィウス朝の初代皇帝ウェスパシアヌスが即位した。

古代ローマ帝国の平和を回復した皇帝ウェスパシアヌス

そんな皇帝ウェスパシアヌスを祀る神殿の遺構が、イタリアの首都ローマのフォロ・ロマーノの中心でもあるカピトリーノの丘に残っている。上の画像の左手に見える三本の柱がそれなんだけどね。

この神殿の建立を始めたのは、ウェスパシアヌスの長男で後に自身も皇帝となったティトゥスだった。そして西暦87年に神殿を完成させたのは、ティトゥスの弟でフラウィウス朝の3代目皇帝ドミティアヌスだった。彼は父と兄を祀り、ウェスパシアヌスとティトゥスの神殿としたらしい。但し、ドミティアヌスは兄を暗殺して皇帝となったという話もあるんだけどね。

フラウィウス朝初代皇帝ウェスパシアヌス

上の画像は今のロンドンの金融街シティの一角に残るロンドン・ウォールの遺構なんだけど、基本的にロンドン・ウォールは中世に築かれたものではあるけれども、その底部には古代ローマ帝国時代のものも残っているんだそうな。（ついでながら、後に息子ティトゥスも軍人としてブリタニアに派遣されたらしい。）

その後、ウェスパシアヌスは軍から退役し、皇帝ネロに仕えたこともあった。そして西暦66年、古代ローマ帝国の属州となっていたパレスティナでユダヤ人が反乱を起こし、ユダヤ戦争が始まった。その鎮圧の為に司令官としてパレスティナに派遣されたのがウェスパシアヌスだった。

その2年後の西暦68年、反乱軍が迫る中で皇帝ネロが自殺。ガルバが次の皇帝として即位した。ところが西暦69年には次々と反乱が起き、ガルバに続いてオト、更にはウィテリウスなどが皇帝とされた。

他方でユダヤ戦争の為に大軍を委ねられていたウェスパシアヌスは、今のハンガリーやルーマニア方面に駐屯していた軍団の支持を受け、加えて当時の古代ローマ帝国の食糧の多くを供給していたエジプトをも確保した。そんなウェスパシアヌスが古代ローマ帝国の皇帝とされたのは、西暦69年12月のことだった。

フラウィウス朝第2代皇帝ティトゥス

ローマに凱旋したティトゥスは、父である皇帝ウェスパシアヌスの親衛隊の長官や執政官となり、西暦79年に父が亡くなった後にはフラウィウス朝の第2代皇帝となって古代ローマ帝国を統治している。

ところが、経験も功績もある皇帝ティトゥスが即位して間もなく、ナポリ近くにあるヴェスヴィオ火山の噴火でポンペイの街が火山灰に埋まるという大事件が起きている。更には首都ローマが大規模な火災で灰燼に帰したこともあった。そして西暦81年、即位して2年で皇帝ティトゥスが病死している。人々に人気の高い皇帝であり、歴代の皇帝の中でも高い評価を受けたティトゥスの死だった。

フラウィウス朝第3代皇帝ドミティアヌス

他方、古代ローマ帝国の中枢であるイタリアの産業を守る為、属州の経済活動に制約を課したこともあるみたい。例えば、西暦91年にはガリア（今のフランス）におけるワイン用ブドウ栽培の半減を命じている。（上の画像は古代ローマ帝国時代から続くワイン造りの歴史を持つフランス東部ブルゴーニュ地方のワイン村ジュヴレ・シャンベルタンのブドウ畑の様子。）

結局、皇帝ドミティアヌスの統治下で古代ローマ帝国の経済は低迷し、財政は悪化し、課税は強化されている。しかも彼の統治は残虐にして恣意的なものとなり、更にはネロ帝と同様にキリスト教徒の迫害をも行っている。当然ながら彼に対する人々の反発は強まり、そして西暦96年、皇帝ドミティアヌスは暗殺された。

ウェスパシアヌス、ティトゥスと続いたフラウィウス朝による統治は、3代目のドミティアヌスで終わってしまった。でも、次の皇帝として即位したネルヴァ、そしてトラヤヌス、ハドリアヌス、アントニウス・ピウス、マルクス・アウレリウス・アントニヌスといわゆる五賢帝の時代となり、古代ローマ帝国の最盛期を迎えることとなるわけだ。

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