ヨーロッパの歴史風景 中世編




西暦1420年、百年戦争下のフランスにおいて、トロワ条約によりイングランド王ヘンリー5世が王位継承権を獲得した。


百年戦争におけるイングランド王ヘンリー5世の攻勢

西暦1415年のアジャンクールの戦いでフランス軍が惨敗して後、イングランド王ヘンリー5世はブルゴーニュ公ジャン無畏公と秘密協定を結び、更に攻勢を強めたらしい。

フランス北部ノルマンディー地方にある要衝ガイヤール城

フランス北部ノルマンディー地方のセーヌ川を扼するガイヤール城(上の画像)は、元々はイングランド王リチャード獅子心王が築いた要衝だったけど、それをフランス王フィリップ2世オーギュスト尊厳王が攻略した城だった。そのガイヤール城もヘンリー5世は西暦1419年に攻略したんだ。

ブルゴーニュ公フィリップ・ル・ボン善良公のイングランドへの接近

他方で、フランスの王太子シャルル(後のシャルル7世)を中心とするアルマニャック派は、危機感を強めていた。その挙句にブルゴーニュ公ジャン・サン・プール無畏公を暗殺したわけだ。

でも、その息子のブルゴーニュ公フィリップ・ル・ボン善良公は、更にイングランド王ヘンリー5世に接近していった。また人気のあったジャン無畏公を暗殺したことで、フランスの人々はアルマニャック派や王太子シャルルに対する反発を強めたらしい。

フランスの首都パリをモンマルトルの丘の上から眺めた

そんな状況をフランス王シャルル6世も無視することが出来ず、西暦1420年にはパリの人々に対して王太子シャルルの命令への服従を禁止したんだそうな。(上の画像はモンマルトルの丘の上から眺めたパリ。)

トロワ条約によってフランス王位継承権を得たヘンリー5世

そして西暦1420年5月にはイングランドとフランスとの間でトロワ条約が結ばれた。その主な内容は以下の通りだった。

  • 王太子シャルルは王位継承権を剥奪される。
  • フランス王シャルル6世の娘カトリーヌとイングランド王ヘンリー5世が結婚する。
  • ヘンリー5世がフランスの摂政となり、シャルル6世の死後にはフランス王となる。

このトロワ条約に従い、翌月にはイングランド王ヘンリー5世はフランス王女カトリーヌと結婚し、パリに入城している。

同じ頃、ブルゴーニュ公ジャン・サン・プール無畏公暗殺に関する裁判も進められ、王太子シャルルは王位継承権を否定された上で追放されている。その裁判でブルゴーニュ公側に立って活躍したのが、ブルゴーニュの宰相となったニコラ・ロランだった。

余談ながら、この中世ブルゴーニュ公国の宰相ニコラ・ロランは、今のフランスに大きな足跡を残している。一つはブルゴーニュワインの商都ボーヌにあるオスピス・ド・ボーヌ(オテル・デュー)を設立したこと。もう一つはパリのルーブル美術館に残る「宰相ロランの聖母」を画家ヤン・ファン・エイクに描かせたことかな。

ブルゴーニュ公フィリップ・ル・ボン善良公のディジョン入城

苦境に陥ったアルマニャック派だけど、王太子シャルルを中心に抵抗を続けていた。フランス南部を中心に活動し、ブルゴーニュ公領については南部のマコンに攻撃をかけていたらしい。

フランスのブルゴーニュ地方の古都ディジョンにあるブルゴーニュ公家宮殿

そんなアルマニャック派の攻撃に対処する為に、ブルゴーニュ公フィリップ・ル・ボン善良公は西暦1422年には中世ブルゴーニュ公国の首都ディジョンに入城したらしい。(上の画像は、ディジョンにあるブルゴーニュ公家宮殿。17世紀から18世紀にかけて増改築されたらしいけど。)

イングランド王ヘンリー5世の急死

時間の問題でランカスター家のヘンリー5世がイングランド王にしてフランス王となると思われた時、突如として事態が急展開した。西暦1422年8月、イングランド王ヘンリー5世が34歳の若さで亡くなったんだ。しかも、その2ヵ月後にはフランス王シャルル6世も亡くなった。

ヘンリー5世とカトリーヌの息子ヘンリー6世がイングランド王にしてフランス王となり、叔父ベッドフォード公がフランスの摂政となった。他方で王太子シャルルもフランス王シャルル7世を称して戦いを続けていたんだ。

他方のブルゴーニュ公フィリップ・ル・ボン善良公は、ベルギー方面に領地を拡大していた。イングランドのランカスター王家とフランスのヴァロワ王家が争いを続ける限り、ブルゴーニュ公家は漁夫の利を得ることが出来るということかもしれないね。

でも、フランスの救世主ジャンヌ・ダルクの登場は近づきつつある。再び事態は大きく動くことになるわけだ。(ちなみに、幼くしてイングランドとフランスの王となったヘンリー6世は、やがてはロンドンテムズ川のほとりのロンドン塔で亡くなることになる。)

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